世界有数のコーヒー生産国であるエチオピア。実は、コーヒーの発祥となった国でもあります。モカとも呼ばれるエチオピアのコーヒーは、現在も日本だけでなく世界中のコーヒー愛好家たちに好んで飲まれています。
この記事では、そんなエチオピア産のコーヒーについて徹底解説していきます。

私もエチオピアコーヒーが好きで、少なくとも100種類以上は飲んできました。ぜひエチオピアコーヒーについて知っていってください!
この記事のポイント
・東アフリカに位置するエチオピアは、アラビカ種発祥の地
・フルーティかつ華やかな風味が特徴でナチュラル精製が多いが、ウォッシュト精製も増加
・シダモ、イルガチェフェ、ハラーといった産地が有名で他にも有数の産地がある
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エチオピア産コーヒーの概要と歴史


主要な栽培種、標高、収穫時期
- 栽培種:在来種
- 標高:1,900~2,000m
- 収穫時期:10~2月
エチオピア(エチオピア連邦民主共和国)は、東アフリカの内陸に位置する国。人口約1億2000万人ほどが暮らしており、急速に発展している国でもありますが、世界的には貧困国に属しています。また、世界最古の独立国としても知られています。
小規模農家による生産が行われており、農協がそれをサポートしています。
そんなエチオピアですが、80以上の民族を抱える多民族国家。そのため、これまでに民族間でたびたび*紛争が勃発しており、コーヒーの安定した生産や流通に支障が出ることが多々ありました。さらに現在では、*気候問題も発生し、干ばつなどの被害で人道的な危機にも直面しています。



購入しようとしていた生のコーヒー豆が仕入れられなくなったり、
私も紛争の影響を感じたことがあります。
コーヒーがエチオピア発祥といわれる理由
エチオピアのコーヒーにまつわる歴史は、9世紀頃まで遡ります。いくつかの伝承がありますが、ヤギ飼いの少年カルディが自身のヤギに、見つけた赤い実を食べさせたところ、羊が元気になったところから始まります。その赤い実こそがコーヒーの実で、現在のエチオピアコーヒーにつながったという伝承が有力。
このコーヒーの赤い実が発見されたとされているのが、現在のエチオピア南西部に位置するカファ地方で、野生のコーヒーノキが自生している地域として知られています。
そして、コーヒーの原種は大きく分けて3つ。
「アラビカ種」「カネフォラ種(ロブスタ種)」「リベリカ種」がありますが、このうちのアラビカ種こそがエチオピア原産であり、これを作るアラビカコーヒーノキが自生しています。世界の流通量の約60%以上を占めている重要な種となります。
エチオピア産コーヒーの特徴


風味について
エチオピア産コーヒーの*一般的な特徴は以下の通りです。
- ナチュラル精製は赤ワインやチョコレート、ベリー系の酸味
- ウォッシュト精製は柑橘系の酸味やハーブのような香り
- 苦味、酸味のバランスが良く甘みもある
これらの特徴は、浅煎りから深煎りまで様々な焙煎度合いに対応できるため、シングルオリジンからブレンドまで広く使われています。
*あくまで一般的な特徴です。生産地域や農園によってその国の一般的な特徴とは大きく異なる風味を持ったものも存在します。
等級(グレード)の見方
コーヒーは農作物のためランクが存在し、そのランクのことを等級(グレード)と呼びます。しかし、等級のつけ方はその国々よって異なることも。
エチオピアのコーヒー輸出等級は、主に「300g中の欠点豆の数(虫食いやカビといった品質の悪い豆)」によって決定されており、欠点豆の数が少ないほど等級が高く風味も良くなります。
下記表に基づいてグレード分けされています。
名称 | 欠点豆の数 |
---|---|
G-1 | 0~3 |
G-2 | 4~12 |
G-3 | 13~27 |
G-4 | 28~45 |
G-5 | 46~90 |
グレードはG-9までありますが、実際に輸出される等級はG-5までで、日本にはG-4までしかほぼ輸入されません。
この中でも*スペシャルティコーヒーとして流通するのは、G-1、G-2が多いです。
その他、以下のような基準が品質管理の基準にもなっています。
- スクリーンサイズ(豆の大きさ)
- 異臭の有無
- 虫の混入
- 色の均一性
- 水分含有率
- クリーンカップ(雑味がなくクリアであること)
代表的な品種について
エチオピアで栽培される主要なコーヒーの品種は以下のようなものが挙げられます。
- 在来種:エチオピアの在来種は膨大なので、複数の種類が混ざっています。そのため、実際の品種の表記には、在来種、原種あるいはエアルームと記載されます。
- ゲイシャ種:ゲシャビレッジ村の生産が有名。フローラルかつフルーティな風味が特徴。
栽培・精製方法の特徴
エチオピアでは、主に以下の精製方法が採用されています。
- ナチュラル:コーヒーの果肉ごと乾燥させ、脱穀して生豆にする方法。含水率12%を目指しながら2-3週間かけてゆっくり乾燥させます。
- ウォッシュト:コーヒーの果肉を除去後、ミューシレージ(果肉と種子のあいだにあるぬめり)を発酵させ、水洗してから乾燥する方法。ウェットミル(果肉除去から乾燥まで)とドライミル(脱穀から選別まで)の2工程があります。
- ハニー:エチオピアでは一部で採用。果肉は除去しますが、ミューシレージを残したまま天日で乾燥させる方法。
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主要な生産地域


シダモ
エチオピア南部に位置する地区で、高品質なコーヒーを生産しています。
精製方法としてはナチュラルが一般的でしたが、降水量が多く水源が豊富。そのため、新しいステーション(水洗加工施設)もでき、ウォッシュトの採用も増加しています。
近年では比較的新しめですが、シダモの中でもグジといった産地が高品質なコーヒーを生産しています。
- フルーティーな酸味や花のような香り。
- 甘み、酸味のバランスが良く、苦みは穏やか。
- 浅煎りから深煎りまで幅広く対応。
イルガチェフェ
イルガチェフェはシダモに属しており、エチオピア最高クラスのコーヒーを生産しています。特にエチオピアのスペシャルティコーヒーにおいては、イルガチェフェが牽引してきたといっても過言ではありません。
ちなみに、シダモとイルガチェフェは全く別の地区だと思われている方も多いかもしれませんが、シダモの中にイルガチェフェがあるということですね。
シダモと同じく、精製方法としてはナチュラルの他にウォッシュトの採用も増えています。
イルガチェフェのコーヒーには、一般的に以下のような特徴が挙げられます。
- ナチュラル精製は、赤ワイン、ストロベリー、チョコレートといったフレーバー。深煎りにしても消えにくい甘みやしっかりとしたボディがあります。低い等級のものでは、発酵したような香りも。
- ウォッシュト精製は、レモンのような柑橘系の酸味に、ピーチ、ティー、ブルーベリー、メロン、花といった豊かなフレーバー。
- 浅煎りから深煎りまで、比較的幅広く対応。
ハラー
エチオピア東部に位置し、標高が比較的高い地域。昼夜の寒暖差、日照量、火山灰性土壌といった恵まれた環境により、古くから高品質なコーヒーの栽培を行っています。
また、生産されているコーヒー豆は、ほとんどがナチュラル精製のコーヒー豆です。
ハラーのコーヒーでも特に高品質なものは、ボールドグレインという銘柄が有名で、豆の長い形状が印象的です。
- ベリー系のフルーティな酸味
- シナモンのようなスパイスの香り
- マイルドで甘みを感じる後味
その他の生産地域
- ジマ:ゲラ農園などが有名。他の地区にも劣らない、フルーティかつスパイシーなコーヒーが特徴
- リム:ナチュラル、ウォッシュトどちらも採用。原生種の栽培で注目。
おすすめの楽しみ方


最適な抽出温度と時間
エチオピアのコーヒーに限らない基本の抽出レシピを以下にまとめました。
- 抽出温度:88-92℃
- 抽出時間:ドリップの場合2-3分が目安。甘みとコクを重視する場合は、やや低めの温度で3分程度かけじっくり抽出がおすすめ。逆にさっぱりとしたコーヒーが飲みたい時は、やや高めの温度で比較的早めの2分程度で抽出を終えることをおすすめします。


ブレンドのアクセントとしての活用法
エチオピアのコーヒーは、その品質、価格、華やかな味わいといった理由から、ブレンドのアクセントとして重宝されています。そのため、他のシングルオリジンの豆と混ぜて楽しむこともオススメです。
初心者の方は、エチオピアの豆30~50%に対して、その他の豆を1~2種類混ぜてブレンドしてみてください。エチオピア単体で飲むのとはまた違った楽しみがみつかると思います。
おすすめの保存方法
- 密閉容器での保管
- 直射日光を避ける
- 冷暗所での保存(冷凍庫も可)
- 適度な温度と湿度(25℃未満、60%以下)
購入時のポイント


豆の選び方のコツ
- 生産地域の確認:目的の味わいに合った地域を選択しましょう。
- 収穫年の確認:新しい豆ほど風味が良いです。
- 焙煎度合い:浅煎り〜中深煎りが一般的に相性が良いです。
- 等級:G1~G2であれば間違いない品質が期待できます。
迷ったときのおすすめ
エチオピアのコーヒーに興味が湧いたけどどれを買ったらいいかわからない方も多いと思います。
迷った際は、まずは下記から試してみてください。初心者の方にもオススメです。
豆のまま


粉


インスタント


まとめ


その確かな品質と魅力的な味わいが、世界中のコーヒー愛好家に愛されているエチオピア産コーヒー。
ぜひ、あなたも自分好みのエチオピアコーヒーを見つけてみてはいかがでしょうか。
少しでもこの記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
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このブログを書くための参考文献としても活用させていただいています。




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